札幌地方裁判所 昭和27年(行)17号 判決
原告 塚本徳次
被告 北海道
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
第一 原告訴訟代理人らは、原告所有の別紙第一目録記載の土地につき、昭和二十六年五月三十一日被告と訴外前田天との間にした随意契約による公売処分は無効であることを確認する、かりに右の請求が理由がないとしても、原告所有の別紙第一目録記載の土地につき昭和二十六年六月八日被告と訴外前田天との間にした随意契約による公売処分は無効であることを確認する、訴訟費用は被告の負担とする、との判決を求め、その請求の原因として、次のとおり述べた。
一(一) 被告は、原告が右狩国浦臼村において権利を有する1石狩試登第九〇八四号、2同第一〇五三七号、3同第一〇六六九号、4同第一〇六七〇号、5同第一〇七〇五号の各石炭試掘鉱区に対する昭和二十四年度分および同二十五年度分の鉱区税(道税)の未納分合計金十九万九百九十四円につき、滞納処分として、昭和二十六年一月二十日右鉱業権の差押処分をした。
その後、原告は内金十万円を納入したが、被告は、更に昭和二十六年五月十六日右未納分の残額金九万九百九十四円につき延滞金、延滞加算金を調整した九万四千六十円に昭和二十一年度から同二十三年度までの分の鉱区税(督促手数料および延滞金を含む。)の滞納額金五万二千百四十六円十五銭を新たに加えた未納額金十四万六千二百六円十五銭に対し、滞納処分として、別紙第一目録記載の原告所有地(ただし、札幌市豊平九条五丁目七十六番地の四十六畑一反二十五歩および同市豊平八条五丁目七十六番地の二百九十一畑三畝九歩を除く。)および家屋一棟ならびに札幌市豊平九条四丁目四十六番地畑一反二十五歩および同市豊平八条五丁目二百九十一番地畑三畝九歩に対し追加差押処分をした。その追加差押調書謄本は、同年同月二十五日郵便送達に付せられ、原告は同二十七日にこれを受領して右追加差押の事実を知つたのである。しかして被告は、同年五月三十一日訴外前田天に対し原告の所有に係る別紙第一目録記載の土地を随意契約により売却した。
しかしながら、右追加差押は、法規の条文中いわゆる追加差押が許されるべき根拠はどこにも見当らないから、無効である。したがつて、被告が訴外前田天に対し本件土地を随意契約により売却した処分もまた無効である。
(二) かりに本件追加差押が単なる差押であるとしても、本件公売処分は、次の理由により無効である。
本件土地に対する差押は、昭和二十一年度から同二十五年度までの鉱区税の滞納分徴収のためになされたものである。しかしながら、昭和二十一年度および同二十二年度においては被告は、鉱区税を地方税として徴収することはできない〔地方税法(昭和十五年法律第六十号)第二条、第四十四条および第四十八条、地方税法(昭和二十三年法律第百十号)附則第百四十二条〕。したがつて、被告が昭和二十三年度から同二十五年度までの分の鉱区税を徴収することはよいとしても右差押は一かつしてされているのであるから結局無効であるといわなければならない。よつて、訴外前田天に対する本件土地の売却処分もまた無効である。
(三) かりに右の(二)の主張が理由がないとしても、本件公売処分は、次の理由により無効である。
本件滞納処分中の差押物件の公売は、地方税法と訴願法との規定により、差押処分の確定すなわち訴願法による訴願の提起期間である六十日が経過するまではこれを執行することができない。いいかえれば、昭和二十六年五月二十八日から六十日の公売停止期間を経過した後である同年七月二十七日以後において初めて公売をすることができるのである。したがつて、それ以前に被告が訴外前田天に対し本件土地を随意契約により売却した公売処分は、当然無効であるといわなければならない。
(四) かりに右の(三)の主張が理由がないとしても、本件公売処分は、次の理由により無効である。
本件土地に対する差押調書の謄本が原告に送達されたのは昭和二十六年五月二十七日である。しかるに、被告はこれに先立つ同年五月十六日に本件土地の公売公告をしている。しかしながら、差押は差押調書の謄本の送達によつて効力を生じ、公売公告は有効な差押を前提とするものである。したがつて、差押の効力発生前にした右公売公告は無効であり、またこれに継続してされた同年五月二十七日の再度の公売公告も無効であるから、訴外前田天に対する本件土地の公売処分は無効である。
(五) かりに右の(四)の主張が認められないとしても、被告は公売公告によつて定められた本件土地の公売期日は昭和二十六年六月七日であると主張するから、被告が右期日前である同年五月三十一日に訴外前田天に対し本件土地を随意契約により売却した処分は、明白かつ重大なかしがあるので無効である。
(六) かりに右の(五)の主張が理由がないとしても、本件公売処分は、次の理由により無効である。
本件土地に対する差押調書謄本および公売公告によれば、差押財産および公売財産として表示されたもののうちには、札幌市豊平九条五丁目七十六番地の四十六畑一反二十五歩ならびに同市豊平八条五丁目七十六番地の二百九十一畑三畝九歩という表示はない。したがつて、右の土地に対する差押の効力は生じていないのである。しかるに被告は、札幌法務局昭和二十六年六月九日受付をもつて、昭和二十六年五月十六日道税滞納処分による差押を原因として右の土地に対する差押の登記をし、かつ右の土地は、本件における他の土地とともに被告から訴外前田天に対し随意契約により売却されている。してみれば、右の土地を他の本件土地と一かつして訴外前田天に売却した処分は無効であるといわなければならない。
(七) 以上(一)から(六)までに述べた理由により、被告が原告所有の別紙第一目録記載の土地につき昭和二十六年五月三十一日に訴外前田天との間にした随意契約は無効であることの確認を求める。
二 被告の主張に対しては、次のとおり述べた。
(一) 訴外前田天に対する本件土地の売却期日は昭和二十六年六月八日であるという点について
原告が北海道空知支庁長安井博恵に対し本件不動産の売却処分に対する異議の申立をしたところ、同支庁長は、これに対し本件不動産の公売処分は適法なものであるという決定をし、かつその決定書中において全く任意に本件不動産の公売は昭和二十六年五月三十一日にしたものであり、売却代金も受け取つている旨を記載している。のみならず、本件売却された土地の登記簿謄本によれば、本件土地については札幌法務局昭和二十六年六月九日受付をもつて同年五月十六日道税滞納処分により差押を原因とする差押の登記がされており、右差押登記は同年六月二十三日受付をもつて同年五月三十一日の公売処分を原因として抹消登記がされ、また訴外前田天に対する移転登記も、その原因は同年五月三十一日の公売処分となつている。これらの事実に徴すれば、本件土地の売却は、昭和二十六年五月三十一日にされたものであることが明らかである。
(二) 地方税法(昭和二十三年法律第百十号)第二十四条第五項の解釈について
被告は、地方税法(昭和二十三年法律第百十号。以下旧法という。)第二十四条第五項は差押物件にかかる課税、督促または差押処分等に対する行政争訟が公売以前に係争する場合に限り適用されるべきものであるとし、あるいは公売処分の前提である差押処分以前の処分につき訴願または出訴がされている限りにおいて適用されるべきものであると主張する。しかしながら、もし被告の主張するように解すべきものであるとすれば、滞納者が差押処分を争おうとするときは、滞納者は公売公告の初日から十日以内に何らかの争訟を提起しなければならないことになる(国税徴収法施行規則第二十二条)。すなわち、行政庁が差押と同時に公売公告をし、その初日から十日の期間を経過した後直ちに公売処分をした場合においては、滞納者は事実上救済の手段を奪われることにもなつて訴願法第十二条に対し旧法第二十四条第五項が特則を設けたことは、ほとんど無意義に帰するわけである。したがつて、差押物件の公売は差押処分の確定に至るまで停止するということは、訴願法による訴願の提起期間である六十日を経過するか、また訴願の提起があつたときはその裁決が確定した時、訴訟の提起があつたときは判決が確定した後でなければ公売をすることはできないと解するのが正当である。
三 予備的請求として、次のとおり述べた。
(一) かりに被告が訴外前田天に対し本件土地を随意契約により売却した日時が昭和二十六年六月八日であるとしても、一において述べた主張は、(一)および(五)において被告が訴外前田天に対し昭和二十六年五月三十一日本件土地を随意契約により売却したという点を除き、全くその順序に従つて維持されるから、本件公売処分は無効である。
(二) かりに被告が、昭和二十六年五月十六日の公告後更に同年五月二十七日に本件公売公告をし、その定めるところにより同年六月七日の公売期日に入札者がなかつたため、法定の手続を経て訴外前田天に対し本件土地を売却したとしても、右の五月十六日の公売公告が当然無効であることは前述のとおりであるから、これに継続してされた再度の公売公告も無効であり、右売却処分もまた無効である。
(三) したがつて、第一の請求が理由がないとしても、原告所有の別紙第一目録記載の土地につき、被告が昭和二十六年六月八日に訴外前田天との間にした随意契約による公売処分は無効であることの確認を求める次第である。
第二 被告指定代理人らは、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、次のとおり答弁した。
一(一) 原告主張事実中第一、一、(一)の事実は、訴外前田天に対し別紙第二目録記載の土地を随意契約により売却した日が昭和二十六年五月三十一日である点を除くほか、これを認める。
(二) 原告は、被告は昭和二十六年五月三十一日に訴外前田天に対し原告の所有に係る別紙第一目録記載の土地を随意契約により売却したと主張するが、右の公売処分は、被告の執行機関である北海道知事の委任を受けた空知支庁長が、昭和二十六年五月二十七日別紙第二目録記載の土地につき、国税徴収法施行規則第二十二条の規定に基き、同年六月七日を公売期日と定めて公告をし、同期日に入札者がなかつたので、国税徴収法第二十五条第二項の規定により公売に付しても買受人のない物件として翌六月八日訴外前田天に随意契約によりこれを売却し、同年六月十一日付で計算書および剰余金を原告に送付したものである。
(三) 原告はいわゆる追加差押は許されないから、その差押は無効であり、訴外前田天に対する随意契約もまた無効であると主張する。しかしながら、被告は、原告の滞納金を徴収するため、地方税法の規定するところにより、国税徴収法の例によつて適法に第二次の差押処分をして当初の差押物件とともに一かつして手続を進行したのにすぎない。したがつて、右差押が無効であり、その売却処分もまた無効であるという主張は、全く理由がない。
二(一) 原告は、第一、一、(二)において、かりに右追加差押が単なる差押であるとしても、被告は昭和二十一年度および同二十二年度にあつては地方税として鉱区税を徴収することはできないとして本件公売処分の無効を主張するが、滞納処分に係る昭和二十一年度分延滞金は北海道税である鉱区税付加税に対するものであり、昭和二十二年度分以降の延滞金は地方税法の一部を改正する法律(昭和二十二年法律第三十二号)によつて創設された鉱区税に対するものであるから、右差押には何ら違法な点はない。
なお、本件差押調書に記載されている昭和二十一年度の鉱区税は、右に述べた鉱区税付加税を意味するもので、付加税という文字が脱落しているにすぎない。
(二) 原告は、第一、一、(三)において、本件滞納処分中の差押物件の公売は、差押処分の確定、すなわち訴願法による訴願の提起期間である六十日が経過するまではこれを執行することができない旨主張する。しかしながら、本件滞納金のうち地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号。)が適用されるものについては、同法には原告主張のような規定は何ら存在せず、その余の滞納金については同法付則第三項の規定により地方税法(昭和二十三年法律第百十号。以下旧法という。)第二十四条第五項が適用され、同条第一項の規定による処分のうち差押物件の公売は、差押処分の確定に至るまで停止されてはいるが、原告主張のとおり解することはできない。
行政処分は、一般的に公定性を有するものであり、本来行政争訟が許される場合においても、法令に別段の定がない限り、これを停止することができない。したがつて、右の旧法第二十四条第五項の規定は、とくに差押物件の公売につき、その物件にかかる課税、督促または差押処分等に対する行政争訟(原告主張のように訴願に限定されない。)が公売以前に係争中である場合においては未確定とされ、その争訟の終結すなわち差押処分の確定に至るまで執行を停止すると解すべきである。
原告主張のように訴願法による訴訟期間中公売を停止すべきものであるとすれば、無期限に未確定とされて公売処分をすることができない場合もありうることになる。したがつて旧法第二十四条第五項の規定は、公売処分の前提である差押処分以前の処分につき訴願または訴訟がされている限り、差押物件の公売をすることができない旨定めているものと解すべきである。
かりに原告主張のような解釈が許されるとしても、旧法第二十四条第五項は、差押処分につき違法があるとして争訟の提起があつた場合において初めて意義を有するのであるから本件公売処分につき適法な訴願がない限り、その公売処分が無効であるということはできない。
(三) 原告は、第一、一、(四)において、本件における公売公告は無効であると主張するが、本件についてはその主張のように再度の公売公告がされた事実は認めるけれども、本件公売公告は昭和二十六年五月二十七日にされたものであつて、公売公告に定められた公売期日に入札者がなかつたために法定の手続を経て売却処分をしたものであるから、原告の主張は理由がない。なお、原告は昭和二十六年五月十六日の公売公告に継続してされた同年五月二十七日の公売公告も無効であると主張しているが、新たに行つた本件公売公告は最初の公告とは何ら関係がないから、無効であるといういわれはない。
(四) 原告は第一、一、(五)において、被告は本件土地の公売期日前である昭和二十六年五月三十一日に訴外前田天に本件土地を売却した処分は明白かつ重大なかしを有するから無効であると主張するが、右売却処分の日が原告主張の日であることは否認する。右公売処分の日は、第二、一、(二)において述べたとおり同年六月八日である。
以上のとおり、本件公売処分は、地方税法、国税徴収法およびこれらの関係法令に準拠してされたものであるから、原告の本訴請求は失当である。
かりに原告の主張が争うべき理由があるとしても、本件公売処分は当然無効とされるべきものでなく、またかしある滞納処分であつたとしても取り消されない限り、当然無効であるとはいわれないものである。すなわち、本件公売処分が取り消されるべき処分であつたとしても、原告は訴願および訴訟の提起期間を徒過しているので、本件公売処分は有効であるといわなければならないから本訴請求は理由がない。
第三証拠<省略>
三、理 由
一 被告が原告主張のような石炭試掘鉱区に対する昭和二十四年度分および同二十五年度分の鉱区税の未納分合計金十九万九百九十四円につき、滞納処分として昭和二十六年一月二十日に原告主張の鉱業権の差押処分をしたこと、その後更に被告が原告主張のような未納額金十四万六千二百六円十五銭につき、滞納処分として同年五月十六日別紙第二目録記載の原告所有地および家屋一棟に対し追加差押処分をしたこと、およびその追加差押調書謄本が同年同月二十五日原告に交付されたことは当事者間に争いがない。
原告は被告が訴外前田天に対し原告の所有に係る別紙第一目録記載の土地を随意契約により売却した日は昭和二十六年五月三十一日であると主張し、被告はこれを争うので、まずこの点について考える。
成立に争いのない乙第一号証に証人前田新清の証言を合せ考えると、空知支庁長は昭和二十六年五月二十七日別紙第二目録記載の土地につき、同年六月七日を公売期日と定めて公告し、同期日に入札者がなかつたので翌六月八日訴外前田天に対しこれを随意契約により売却した事実を認めることができる。したがつて、本件公売処分は、昭和二十六年六月八日にされたものであるといわなければならない。甲第三号証および同第四号証ならびに同第五号証の一ないし五のみをもつてしては右認定事実を覆すことはできず、他にこれを左右するに足りる証拠はない。
してみれば、訴外前田天に対する本件土地の売却処分が昭和二十六年五月三十一日にされたことを前提とする原告の主張はすべて理由がないから、被告が原告所有の別紙第一目録記載の土地につき昭和二十六年五月三十一日に訴外前田天との間にした随意契約は無効であることの確認を求める原告の請求は失当であるとして棄却すべきである。
二 原告は更にかりに訴外前田天に対し本件土地を随意契約により売却した日が昭和二十六年六月八日であるとしても、本件公売処分は無効であると主張するので、次に順次判断することにする。
(一) 原告は本件追加差押は何らこれに関する規定がなく、その許されるべき根拠を欠き無効であるから、訴外前田天に対する本件土地の随意契約による売却処分は無効であると主張する。なるほど国税徴収法その他関係法令にはとくに除外した物件のほか、差押財産の種類、数量等については別段の規定もなく、またとくに追加差押を認めた規定もない。しかしながら、このことから直ちに右追加差押が無効であるということはできないのであつて、かえつて被告は原告の滞納金等を徴収するためには何時でも正当税額を徴収するに足りる義務者の財産を差し押えることができるといわなければならない。したがつて、被告の追加差押が無効であるという主張および右追加差押の無効を前提とする本件公売処分が無効であるという主張は理由がない。
(二) 原告はかりに本件追加差押が単なる差押であるとしても本件土地に対する差押は昭和二十一年度から同二十五年度までの鉱区税の滞納分徴収のためにされたものであつて、被告は昭和二十一年度および同二十二年度にあつては地方税として鉱区税を徴収することはできないから、この両年度分に対する差押と昭和二十三年度から同二十五年度までの分の鉱区税に対する差押とを一かつしてしたのは違法であるから、本件差押は無効であると主張する。
しかしながら、地方税法(昭和十五年法律第六十号)第二条、第四十四条、第四十八条および地方税法(昭和二十三年法律第百十号)附則第百四十二条によれば、被告は、昭和二十一年度においては、地方税として鉱区税附加税を徴収することはできたが、独立税として鉱区税を徴収することはできなかつたのであるが、昭和二十二年度以降においては、地方税法の一部を改正する法律(昭和二十二年法律第三十二号)により地方税として鉱区税が創設されたので、その後引続き地方税として鉱区税を徴収することができることとなつているのである。
ところで、成立に争いのない甲第二号証によれば、被告は昭和二十一年度分として鉱区税につき滞納処分を行つたようにみえるが、弁論の全趣旨ならびに右地方税法等の法律の規定にかんがみれば、被告は昭和二十一年度分については鉱区税附加税についての滞納処分を行つたのであるが、右甲第二号証の差押調書謄本の該当処分に附加税という文字を書き落しているのにすぎないことが認められる。この認定を左右するに足りる証拠はない。
果してそうだとすれば、被告は昭和二十一年度および同二十二年度においては地方税として鉱区税を徴収することができないことを前提とする原告の主張も理由がない。
(三) 原告は更に右の(二)の主張が理由がないとしても、本件滞納処分中の差押物件の公売は、差押処分の確定、すなわち訴願法による訴願の提起期間である六十日が経過するまではこれを執行することができない旨主張する。
しかしながら、本件滞納金のうち地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)が適用されるものについては、同法に原告主張のような規定がないから、原告の主張は理由がない。次にその余の滞納金については地方税法(昭和二十三年法律第百十号)第二十四条第五項が適用され、同条第一項の規定による処分のうち差押物件の公売は、差押処分の確定に至るまで停止されていることは原告主張のとおりである。しかし右の第二十四条第五項の規定は、滞納処分中、訴願または訴訟の提起があつた場合においては、差押物件の公売はその処分の確定に至るまで執行を停止すべき旨定めたものであると解すべきであるから、この点に関する原告の主張もまた理由がない。
(四) 原告はかりに右の(三)の主張が理由がないとしても、本件土地に対する差押調書の謄本が原告に送達されたのは昭和二十六年五月二十七日であるのに、被告はこれに先立つ同年五月十六日に本件土地の公売公告をしているから、差押の効力発生前にした右公売公告は無効であり、またこれに継続してされた同年五月二十七日の公売公告も無効であると主張するが、本件土地の公売公告が原告主張の五月十六日にされた事実は原告において立証しないところであるばかりでなく、本件公売公告の日は前記認定のとおり昭和二十七年五月二十七日であるから、原告の主張は理由がない。
(五) 原告は更に続けて右の(四)の主張が理由がないとしても、本件土地に対する差押調書謄本および公売公告によれば、差押財産および公売財産として表示されたもののうちには、表示に誤りがあるので差押の効力を生じないから、かような土地を他の本件土地と一かつして売却した処分は無効である旨主張する。なるほど差押財産および公売財産として表示されたもののうちには札幌市豊平九条五丁目七十六番地の四十六畑一反二十五歩ならびに同市豊平八条五丁目七十六番地の二百九十一畑三畝九歩という表示はないが、成立に争いのない甲第二号および第三号証ならびに甲第五号証の一ないし五に同じく成立に争いのない乙第一号証を総合すれば、差押調書および公売公告に表示された札幌市豊平九条四丁目四十六番地畑地一反二十五歩および同市豊平八条五丁目二百九十一番地畑地三畝九歩は、同市豊平九条五丁目七十六番地の四十六畑一反二十五歩および同市豊平八条五丁目七十六番地の二百九十一畑三畝九歩を意味するもので、単なる誤記にすぎないといわなければならない。しかしながら、この程度の表示のかしは本件公売処分を当然無効ならしめるに足りないからこの点に関する原告の主張も理由がない。
以上順次判断したところにより、原告所有の別紙第一目録記載の土地につき昭和二十六年六月八日被告と訴外前田天との間にした随意契約による公売処分は無効であることの確認を求める原告の予備的請求もまた失当であるとして棄却すべきである。
よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 猪股薫 吉田良正 秋吉稔弘)
(目録省略)